みなさんのお住いの地域に、町工場はありますか?
もしなければ、町工場がある地域に「暮らす」という状況を想像してみて下さい。仮に引越し先の隣家が金属加工を行う職人さんの町工場であったなら、日々の生活の中であなたは何を思うでしょうか。
ここ20年ほど、日本・世界の経済動向の変化が頻繁に報じられ、日本の製造業についても、その85%以上を占め戦後日本の経済・技術発展を支えてきた地域の小規模企業(中小企業全体では製造業の約99.5%)の経営難が取り沙汰されるようになりました*1。そこでの重要なテーマは、後継者不足や事業所数の減少、日本産業の国際的競争力の低下など、経営者的視点からの課題が主となっています。もちろん、これらはその重要性に疑問を差し挟む余地はなく、継続的に議論されていくべきでしょう。
しかしながら、今回は視点をもっと「近く」し、「地域性」にスポットを当てて現在の町工場の実態の一部を見てみましょう。
冒頭の質問のごとく、町工場が集中する工場集積地では、ここ数年、比較的地価の安い工場跡地に住宅・マンションが新築されてきています。その結果、地域の事情を知らない新住民と町工場との間で、工場の騒音・振動等に関するトラブルが増加してきました。
こうした住宅と工場が混在する地域、すなわち「住工混在地域」での、地域住民と工業の共存という観点から、日本のものづくりを支えてきた町工場について、一度考えてみましょう。戦後の日本経済発展の歴史や新たなまちづくりの可能性が見えてくるかもしれません。
*1 経産省調べ(2007年)
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