津田大介氏(以下、津田):前に田坂広志さんとソーシャルビジネスについてトークしたことがあるんですが、そのときに田坂さんが印象的な話をされてました。企業のCSR――要するに企業活動の中でどうやって企業が社会に貢献していくかというテーマのセッションだったんですけれど、その中で「ソーシャルビジネスとはそもそもおかしい単語だ」という話をしたんです。ビジネスとは全てソーシャル=社会的なものであって企業は利益を挙げることで社会に対して何らかの価値を返しているんだから、ことさらにソーシャルビジネスと言うのはおかしいと。その話が村上さんのこれまでの話とつながるなと。
最初から村上さんは、質と量でかなりレバレッジが効くようなところからスタートし、リブセンスの事業が上手く廻り始めてからは自分が社会にインパクトをもたらす可能性も広がったと思うんですけれど、具体的にリブセンスで社会との関わりをより強く意識されるようになったのはいつ頃からですか?
村上太一氏(以下、村上):ある程度会社が上手く廻りだして、自分のモチベーションって何だろうと考えた時からですね。お金とか必要以上にあっても幸せだと感じないなと。やっぱりインパクトとか、サービスを純粋に使ってもらって「良かった」と言われたいとかそういったものの方が興奮を覚えるようになって。
単に収益挙げるだけならもっと色んな手段や方法がある。ただ、それだけだと、私も従業員も幸せになんないよな、とすごく感じるようになりました。実際、世の中全体がそういった会社を求めるようになってきているような流れを感じています。
津田:最初に起業したときから根本のところにある理念はいかがですか。揺らがず、そのまま自然に大きくなってきている実感はあります?
村上:そうですね。幼い頃からそこはずっと変わらず。けれども忙しくなりすぎるとたまにぶれてしまうときがあって、そんな時は一人合宿をしています。
安部敏樹(以下、安部):熱いなぁ。
津田:一人合宿で自分とひたすら会話をして会社をどうしていくんだみたいなのをしているんですね。そういえば安部さんの会社も5周年ですね。よく5年も持ちましたよね(笑)。
安部:もともとかなり労働収益型のビジネスですからね。
津田:リディラバを立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。
安部:大きな社会的な分析からの意見と、原体験と2つあるんですけど。
まず社会的な分析の話をすると、先ほど本来ビジネスは全て社会的なはずだという登坂さんの話を聞いて、僕も本来そうであると思うんです。ただ、今それが本当にそうなっているかというのは結構微妙だなって思っています。
結局、資本主義が社会性を反映するためのいい仕組みにはなっていないと思っていて。じゃあ民主主義や資本主義という仕組みの中でどうやって社会性を反映していけるのか、もう少し社会性が反映しやすい形はどんな形か、を追求することが一つの大きな目標です。
原体験の方は、僕が14歳の時に親をバットで殴ってしまったんですね。家を追い出されて、当時学校も行ってなかったので学校にも行けずに駅前のコンビニでたむろしていたらお巡りさんに声をかけられて、という子供だった。その時に感じたのは、コンビニの前でたむろしている僕らに道行く人が全く興味をもたなかったことなんですよね。本当は僕ら子供はそこにいるはずじゃなくて、その時間は学校に行ってなきゃいけないはずだし、僕らは制服を着ているんだから誰かが声を掛けるのが普通じゃないですか。学生がタバコを吸って酒を飲んでるのもおかしい。
大人が誰か声を掛けていれば多分その子たちは変わったはずだし、僕らは声を掛けて欲しかった。でも誰も僕らに声を掛けないんですね。そこに社会の無関心がある。同じ気持ちを他のマイノリティーや社会的弱者と言われている人達も感じているんじゃないかな、と昔から思っていて。大人になったらやっぱりそうだったのでその仕組みを変える仕事をしようと思ったんですね。
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