東京五輪招致の最終プレゼンの象徴的場面となった滝川クリステルの「お・も・て・な・し」のパフォーマンス。見返りを求めない日本人のホスピタリティの精神を強調し、日本人が互いに助け合い、寛容な人種であるというメッセージが全世界に発信された。東京五輪開催は決まった。しかし、世界中から集まる人々をいかにもてなすか。言葉の壁はもちろん、オリンピックと同時開催されるパラリンピックでは諸外国からの障がい者たちの多くもやってくる。「オリンピックムーブメント」を文化としてどう体現するのか。あらゆる人をもてなすために…、今回は準備が進むバリアフリーの観点から考えてみることにする。
2020年に開催が決まった東京五輪。
5年後、そのスポーツの祭典を一目見ようと、世界中からたくさんの人が訪れる。招致成功の決めてとなった「おもてなし」精神の一環か、道路・交通施設のバリアフリー化が急ピッチで進んでいる。例えば、昨年秋の国土交通省の有識者会議で提案された交通政策基本計画案では、構内での転落を防ぐためのホームドアを設置する駅を現在の583駅から800駅にまで増やすことを減給。また、空港から各競技場へのアクセスルートの整備や、大会関連情報に関する案内表示の整備など約10項目にわたって、準備を進めるとしている(※1)。
バリアフリー化に向けた国の熱心な取り組みは、五輪招致成功後のできごとなのかと思いきや、そうではない。実は、日本はかねてより”バリアフリー先進国”ということをご存じだろうか。遡ること10年前、国土交通省は、高齢者や障がい者がスムーズに移動ができるようにするための施策を推し進めるバリアフリー法を制定した。主要な駅やターミナルでは車いすでも利用できるトイレの設置、段差の解消などといったように環境の整備が進んだ。そして、法案施行5年後の2010年には、主要駅・ターミナルの大方のバリアフリー化が完了している(※2)。アメリカの鉄道各駅のエレベーター設置率が5割程度であることと比較すると、その差は歴然なことがわかる(※3)。
国土交通省 「バリアフリー法の施行状況と今後の課題-バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)-」http://www.mlit.go.jp/common/000191332.pdf
こうした動きは必ずしも行政主導というわけではない。新規ビジネス開拓のため、ICT技術を応用してバリアフリー化に取り組む民間企業も増えている。例えば、音声認識ソフトを手掛けるアドバンスト・メディアは、聴覚障害者向けの音声変換文字システムを開発。このシステムは、聴覚障がい者であり、議員としても活動する元“筆談ホステス”の斉藤りえ議員が所属する東京都北区議会で導入されている(※4)ほか、鳥取の図書館などでの運用が始まっている(※5)。
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