2012年、ロンドンオリンピック。男子100㍍走の試合に、両足義足の選手がいたことを知っているだろうか? 南アフリカ共和国代表のオスカー・ピストリウス選手だ。彼は先天的に足に障害があり、生まれてすぐに足を切断せざるをえなかった。そのため、彼は生まれてからずっと義足を使用している。
幼いころから義足であっても身体能力の高かった彼は様々なスポーツを嗜んでいたという。そんな彼が陸上をはじめたきっかけはもともとやっていたラグビーの怪我のリハビリだった。あっという間に様々な障がい者大会で好成績を残し、健常者大会でも上位に食い込むようになった彼はいつしか、オリンピックに出たいと思うようになったという。
オリンピック出場という夢にむかって励むピストリウス選手には多くの壁が立ちはだかった。
国際陸上競技連盟は義足は陸上競技に優位にはたらくとして、参加を認めなかったのだ。しかし、ピストリウス選手はそこで諦めなかった。スポーツ仲裁裁判所に提訴し、マサチューセッツ工科大学協力のもと義足が優位に働くという十分な証拠はないという結果を導き出し、見事ロンドンオリンピックへの切符を手にした。
結果は、準決勝敗退。しかし、同大会で優勝したボルト選手とのタイムの差は、わずか1秒28。ピストリウス選手が五体不満足とは思えない走りをしていることがいえる。
そして、ピストリウス選手の記録は一般的なアスリートのそれとは比べ物にならない伸びをみせている。世界最速の男として有名なウサイン・ボルト選手と比較してみよう。北京オリンピックでは11秒17であったタイムが10秒91に縮まっている。ウサイン・ボルト選手は北京五輪で9秒79であったタイムがロンドン五輪では9秒63であることから、ボルト選手がもともと速いということを差し置いてもオスカー・ピストリウス選手の伸び率は凄まじいことがわかる。
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