——前回は、院内学級の教員についてのお話を聞き、人事に課題があることを知りました。そのほかに、赫多さんが問題だと思われていることはありますか?
赫多:先ごろ、財務省が公立小中学校の教職員数の大幅削減を打ち出しました。子供の数が減っているなら、先生の数も減らしていいだろうということでしょう。子供の在籍数が教員数の基になる…その考え方でいくと、いわゆる院内学級への教員配置はますます厳しくなってしまいます。かつては、長期間入院して治療を受ける子供が一定数いて、院内学級に学籍を移していましたが、現在は子供の入院の短期化が進み、学籍を移さないケースも出てくる…。
——何が変化したのでしょうか?
赫多:医療技術の進歩もあり、短期の入院で治療をすることが主流になったのです。長期から短期に変わった理由は、白血病等小児がんの子供のケースが一番わかりやすいでしょう。抗がん剤を投与すると、白血球の数が減って免疫力が低下します。白血球数が相当低い期間は、入院してクリーンベンチ(空気清浄機)等で感染を防がなければなりません。ある程度回復すれば、次の治療まで一時退院させ、自宅療養に切り替えます。そして、また入院して治療を受けるということを繰り返します。入院の短期化は、医療費節減という厚労省の意向も関係しているのだと思います。たとえ院内学級に学籍を移していても、このような自宅療養中の教育は、きちんと保障されていないケースが多いと思います。
——先生が病院に常駐する場合と、学校から訪問して授業する場合がありますよね。どちらが子供にとってよい影響を与えるのでしょう?
赫多:病院に同じ先生が常駐している方が、望ましいと思います。常駐していれば、医療スタッフとの連携を図りやすく、トータルケアの一員にもなれます。また子供の体調に、臨機応変に対応することが可能です。例えば、子供の具合が午前中は悪くても、午後には良くなっていることがあるわけです。先生が常駐していれば、病室を覗いて「具合が良くなったから、ちょっと勉強しようか」と対応できますよね。ですが、訪問学級の場合では、先生が来院しても、「今は具合が悪いのでダメです」となれば授業ができない…その先生は午後に別の病院の授業に行かなければならないとしたら、結果的に具合が良くなった子は、その日に授業を受けられないのです。
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