先月16日、福岡県では子どもを貧困から救うための新たな施策が始まった。それはコンビニエンスストアで余った賞味期限前の販売期限切れの食品をNPOを通じて貧困家庭の子どもに届ける仕組みである。更に、企業からも廃棄予定の食品を集め児童養護施設等を支援する「フードバンク」活動の支援に乗り出した。横浜市でも同様の取り組みが行われていたものの、都道府県レベルでこの仕組が導入されるのは同県が初めてである。
日本におけるフードロス(食べられる食品を廃棄すること)は深刻で、推計年間500〜800万トンもの食品が廃棄されている。(NHK調べ)これは世界1位2位を争う廃棄量である。
世間でも騒がれているように日本における子どもの貧困は問題視されており、全体の1割を超える子どもが貧困であるとされている。
以前から世界的に見て先進国におけるフードロスは問題視され、貧困地域のご飯の食べられない子供たちへ仮にその廃棄物を配ったとしたらどのくらいの人々が救われるかという試算は出されていたものの、それを実際に実行した人はほとんどいないに等しかった。なぜ行われていなかったのか。
先進国内の余剰食料を途上国の貧困層に届けるということには安全面、衛生面等の難題が多数あるため、これまでほとんど行われてこなかった実情がある。国内であればそのような問題は起こりにくくなるであろう。しかし、フードバンクが日本で設立されたのは2000年のことで、米国では40年以上ある歴史と比べるとまだ最近のできごとである。
日本国内で子どもの貧困が問題視されるようになったのは2009年とつい最近のことである。政府は1965年を境に低所得水準世帯の統計を取ることをやめ、国民の中でも日本国内における貧困に対する問題意識は薄くなり、「豊かな国」というイメージが強かった。ところが2008年のリーマン・ショックで誰もが経済的に困難な状況に陥ることを国民が体感したこと、そして政府が2009年より貧困統計を再度公表するようになった。この頃から日本における貧困が、特に「子どもの貧困」に対する国民の関心が高まった。
徐々に明らかになってきた日本における子どもの貧困問題。この福岡県の取り組みがモデルケースとなり、今後他県にも広がっていくことを期待したい。