福岡県は、平成28年度に男性とLGBT向けのDV被害の専用相談窓口を開設する。県の相談所に男性の専門相談員を配置し、男性は週3回、LGBTは月2回電話相談を受け付け、重大な事件に発展する恐れがあるなど緊急時には一時的に保護し、自立支援にも取り組む。県によるとLGBT向けのDV被害専用窓口は都道府県レベルで全国初という。
警察庁によると、平成27年のDV被害認知件数は全国で63,141件と配偶者暴力防止法施行以後最多で、うち男性の被害は7,557件で全体の12.0%、23年の3.3%の4倍近くと大幅に増加している。
しかし女性向けの相談窓口は数多く開設されている一方、男性向けは数が少なく、「避難用シェルター」はほとんどない。
また、統計上では被害者の9割近くは女性だが、職場や親に知られたくない、恥ずかしいなどの理由から、男性のDV被害は顕在化しにくい。
こうした状況に対応すべく、近年では男性の専門相談員を配置した被害専用窓口が少しずつ現れてきた。
そして今回、LGBTのDV被害にも光が当てられた。LGBTの場合は男性よりも複雑で、LGBTであることを隠していたり、相談窓口で理解してもらえないかもとの不安があったりと、更に相談しにくい環境にある。
対象が先入観で限定されてしまっているために支援が行き届かない例は他にもある。例えば父子家庭の支援。ひとり親世帯の7世帯に1世帯は父子家庭であるにも関わらず(※1)、ひとり親世帯への中心的な支援は比較的収入の少ない母子家庭を念頭に置いた経済的援助だ(※2)。父子家庭は母子家庭に比べると収入は多いが、その分子供と過ごす時間は圧倒的に少ない(※3)。父子家庭に必要なのは経済的援助の機会よりも、子育てをサポートしてくれる環境なのかもしれない。
支援すべき対象はそれだけなのか。すべての対象がその同じ支援で十分なのか。行政が敷くセーフティネットに漏れはないのか、今一度確かめる必要があるように思う。