小さな水槽から覗く大きな可能性

  • オープン記事
  • 農業
  • アクアポニックス
この記事の読了時間:約3分
2016.06.14
Sn
Photo:http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000018039.html

 水資源の乏しい地域で生きる人々にとって、水の確保は命をつなぐ生命線だ。人間は単に飲み水として水を摂取するためだけではなく、穀物生産のためにも多くの水を消費する。例えば、1㎏の米を生産するためには3.6tもの水を消費しなければならないと言われている(※1)。水が希少な地域では、農業用水として水が大量消費されることは生死にかかわる問題である。そんな水不足の地域で農業を行う手法として近年注目を集めているのが「アクアポニックス」だ。

 

 「アクアポニックス」という言葉は、魚の水産養殖(Aquaculture)と植物の水栽培(Hydroponics)という2つの言葉を合わせた造語である。その名が示すとおり、魚と植物を1つのシステム内で育てる次世代型の一次産業だ。メカニズムは、魚の排出物を微生物が分解し、植物がそれを栄養として吸収、浄化された水が再び魚の水槽へと戻るというものだ。このように、地球にやさしいエコな循環系を持つ「循環型農業」であることが特徴である。循環型農業として資源を無駄にすることなく生産を行えることに加え、作業工程が減って作業が単純化する特色も相まって、アクアポニックスは従来の農耕の2.6倍もの高い生産力を誇るという(※2)

 

 このアクアポニックスを用いた食糧生産では、使用する水の量を従来の10%にまで抑えることが可能であり、水資源の乏しい地域で農業を行う画期的な方法として期待されている。実際に、干ばつに苦しむオーストラリアや中東地域、更には紛争により水不足や食糧不足に苦しむパレスチナへの救済策として、アクアポニックスの技術支援が進められている。

 

 アクアポニックスが解決するのは水問題だけではない。循環型農業が成立するアクアポニックスの特徴は、単一の問題解決にとどまらない様々な可能性を示してくれる。まず、アクアポニックスでは魚にとって有害となる農薬が使用できないため、生産される作物はすべて無農薬のものになる。また、資源の無駄が抑えられている循環型生産システムであるアクアポニックスは、環境にかける負荷が少ないエコな一面もある。このような特徴を持つアクアポニックスが広く浸透していけば、環境に優しい「持続可能な農業」がおのずと実現する事だろう。

 

 このように、アクアポニックスをいうシステムは、水不足の地域に安定的な食糧生産をもたらすだけではなく、持続可能性の高い農業の実現にも寄与する。その特徴から、CSRや食育など適用可能範囲は幅広く、さまざまな形で応用されている。アクアポニックスによって実現される理想の社会は、まだまだ無限の可能性を帯びている。

 

 一方で、日本ではアクアポニックスの導入事例はまだ少ないため、あまり馴染みがなく遠い世界の話だと感じるかもしれない。しかし、私たちの日常生活でもこのようなアクアポニックスに触れられる機会が増えていることをご存じだろうか。

 

 日本にアクアポニックスを導入し、拡大するため活動をしている「株式会社おうち菜園」は、2015年12月に家庭でアクアポニックスをに触れる事ができる家庭用キットの販売を開始した。この家庭用キットは小さい空間の中に生体系の縮図を内包している。植物は水の循環で育つため、面倒な水やりや草取りは不要だ。必要なのは、月々200円に満たない程度の電気代と、毎日の魚のえさやりだけである。


 手入れの手間がかからない家庭菜園として、もしくは部屋を彩るインテリアとして、アクアポニックスの家庭用キットを導入してみてはいかがだろうか。日常生活の片隅にある小さな水槽の奥には、無限の可能性を持った大きな世界が開けている。

 

※1 環境省『virtual water』(最終閲覧:2016年6月14日)
※2 おうち菜園AQUAPONICS(アクアポニックス) - さかな畑 -(最終閲覧:2016年6月14日)

Facebookコメント

Ridi

リディラバ メディア事業部

リディラバ メディア事業部
お問い合わせ:media@ridilover.jp

自分用にメモをつける

意識調査

実施中 日本にも分断はあると思いますか?

1
アメリカ大統領選挙やフランス大統領選挙など世界で分断が叫ばれています。日本にも分断はあると思いますか?
合計: 30

Facebookページにぜひ「いいね!」をお願いします!「いいね!」を押すと、TRAPROの最新記事が受け取れます