超高齢化社会の日本。平成25年8月時点で65歳以上の高齢者(以下高齢者)の人数は、3186万人とされている。これは総人口の約1/4にあたり、その高齢者の約半分が75歳以上である。高齢化が急速に進む日本で深刻化しているのが、高齢者による交通事故である。平成24年度に交通事故で亡くなった人のうち、半数以上が65歳以上であった。(※1)以下のグラフは交通事故で亡くなってしまった高齢者の状況を表したものである。そして特に注目したいのが約1/4が自動車運転中に起きているということだ。
高齢者の交通事故死者 状態別割合(平成24年 警察庁)
出典:明日の暮らしを分かりやすく政府広報オンライン「高齢者の事故は増えているの?〜交通事故死者数に占める高齢者の割合は約半分」(最終閲覧日:平成28年7月14日)
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交通事故件数は年々減少している一方で、交通事故を起こす高齢者の割合は増加をしている。2014年に高速道路各社と警視庁がまとめたデータによると、高速道路における逆走のうち、約7割が高齢者ドライバーによるものだということが分かった。(※2)
高齢者が運転を続けなくてはいけない理由はなんだろうか。もちろん運転が好きで続けたいという人も居るであろうが、要因の一つとして「助けてくれる人の存在がない」ということが考えられる。子どもや孫、そして地域の若者が病院に連れて行ってくれたり、買い物を手伝ってくれるならば車を手放せるかもしれない。しかしながら、核家族化や少子高齢化が進む昨今、全高齢者にそういった助けの手が差し伸べられるとは到底考えられない。そして、最近話題のアクティブシニアという言葉からも察する通り、元気な高齢者が増える中で「自分はまだ大丈夫」と思う高齢者も少なくないようだ。(※3)
しかし現状、高齢者の自動車運転中に起こる事故の約15%が車の操作ミスである。これは65歳以下のドライバーの2倍の件数であり、高齢者が運転をしなくても、快適に過ごせる環境の整備が急務である。
高齢者に運転免許証を変換してもらおうと働きかける地域もある。高齢化率全国第4位の山口県警では、高齢ドライバーに免許証の自主返納を促している。なかなか返納に踏み切れない高齢者ドライバーのためにタクシー乗車の割引や、スーパーで購入した商品の無料配送など500以上のサービスを用意した。その結果自主返納は5倍に増えたそうだ。
大手旅行代理店であるJTB九州は、タクシーに1ヶ月好きなだけ乗ることができるタクシー版の定期券「JTBジェロンタクシー」の発行に向けて動き出している。有料モニターとして福岡市内在住の70歳以上の高齢者50名に1ヶ月間お試しで利用してもらったそうだ。モニターの第二回目も開催予定だそうだ。
一方でまだまだ運転をしなくては生活できない高齢者は大勢いる。そんな高齢者のために無料の運転講習会を開いている地域があったりと取り組みは徐々にではあるが進みつつある。
また、テクノロジーの発展を利用した別の取り組みも進んでいる。DeNA、NTTドコモ、福岡市、九州大学は、自動運転バスの運行を目指して研究開発を進めている。こういった公共交通機関の整備も高齢者の足となるだろう。
介護施設や老人ホームの整備が進められている一方、元気な高齢者に対するサービスも整備していく必要があり、これらの取り組みがモデルケースとなり、全国的に普及していくことに期待したい。