あなたの死後、ペットはどこへ行くの?

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2016.08.02
Cat with elderly hand  1
Photo:K Whiteford(http://www.publicdomainpictures.net/view-image.php?image=30316&picture=)

 2015年9月、総務省は日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が過去最高の26.7%になったと発表した。4人に1人が高齢者となった現代の日本では、様々な問題が発生している。高齢者のペット飼育放棄問題も、近年話題となっている問題の一つだ。

 

 高齢者は他の年代と比べてペットを飼育している割合が高い。一般社団法人ペットフード協会の調査によると、飼い主の年代は犬・猫ともに高齢者を含む、50~60代特に多いという[1]。高齢者がペットを飼うことは、高齢者の健康寿命にも好作用をもたらす。ペットの散歩で外へ出歩く機会が増えること、ペットというコミュニケーションツールを通じて孤独の解消に寄与すること、もしくはペットそれ自体とのつながりを感じられるような状態に高齢者がおかれることがその作用の一例である。このような作用を期待して、高齢者がペットを飼い始めるケースが多く見受けられるという。

 
 日本人の健康寿命は男性71.19歳、女性74.21歳だ[2]。一方で犬の平均寿命は14.85歳、猫は15.75歳である。60代の高齢者がペットを飼い始めたとして、ペットが天寿を全うできるまで飼い主としての責務を果たすことができないケースも当然ながら想定される。一例として、東京都では高齢者によると見られる犬猫の飼育放棄の割合が2014年度に68%に達したという。

 

 もし飼い主がペットより先に亡くなってしまったとしたら、残されたペットたちはどうなってしまうのだろうか。所有者を失ったペットは、引き取り手が見つからない場合、保健所や動物愛護センターに送られ、殺処分されてしまうケースも少なくない。現在では全国で年間12万8241匹もの犬猫が殺処分されており、実に1日あたり約350匹が殺処分で死んでいる計算になる[3]。そして、神奈川県の調査によると、保健所が犬を引き取る理由の約3割が「(飼い主の)高齢などによる病気・死亡」であるとされる。

 

 生涯の伴侶ともいえるペットが、自分の死後に殺処分される最期を迎えることは、あまりに悲しい事である。多くの飼い主にとって、ペットは替えの効かない大切な存在であり、家族の一員でもあるペットを自分の死後路頭に迷わせたくないという心理も当然である。

 

 ペットを飼っていない人にとってペットの殺処分問題は無縁と思えるかもしれないが、実際は社会全体に影響を及ぼしている。ペットの殺処分にかかる費用は、総計で年間約50億に及ぶという、そして、この費用の財源は私たちの税金だ。生前に飼い主が自らの死後ペットにかかるコストを負担している状態は、社会全体から見ても受益と負担の一致という点で道理であろう。社会全体の負担を考えても、ペットが路頭に迷わないためのセーフティネットが必要だ。その一つの解消法が、生前に老犬ホームや老猫ホームと契約を交わしておくことである。

 

 老犬ホーム・老猫ホームとは、ペットの老化によって飼育困難になった犬や猫を引きとるペット向け介護施設であり、その名のとおり老人ホームの犬猫版である。飼い主がなくなってしまった時にはペットも高齢化していることが多く、高齢のペットには飼い手がつきにくいことから保健所へ送られてしまうケースが多いという。老犬ホーム・老猫ホームは、そのようなペットの受け皿になる。自分の死後の対策としてこのような施設を利用することで、飼い主に何かあったときに預けられる手はずを整えておくということが大切だ。

 しかし、ペット介護施設を利用する際にも費用が発生する。老犬ホームの年間平均利用料金は約56万円であり、ペットの終生保育を考えたときに多額の負担となってのしかかる[4]。そのような費用負担対策として、ペット保険が有用だ。飼い主の死後、老犬ホーム・老猫ホームへの入居費用をはじめとして、ペットの飼育や新しい引き取り先を探す場合にもコストが掛かる。また、運よく引き取り手が見つかったとしても、新しい引き取り手がペットを保育する際にも当然多額の飼育費用が発生する。新しい飼い主を捜す資金や引き取り施設への入居費用を、この保険から捻出することができる。

 

 また、直接的にペットを飼育する人を指定して飼育費用分の対価を残すペット信託という制度もある。ペット信託は、2013年に商標登録された信託法に基づいた制度である。自分の死後、飼い主となる人と信託契約書を締結し、遺産の一部を一般の財産と切り分けて相続することができる仕組みだ。信託管理人を選んで飼育費が適正に使用されているかチェックすることも可能であり、この制度の活用によって自分の死後もペットに安心して天寿を全うしてもらう確約が持てる。


 高齢化が進んだ多死社会では、私たちは死後のことを考える機運も増大していくだろう。2013年9月に施行された改正動物愛護法では、飼い主はペットが命を終えるまで適切に保育する終生保育の責任を負うことが定められた。私たちは、自分がいなくなった後の世界でペットがどのような暮らしをするのか思いを馳せなければならず、高齢化が進展する日本では考える機会も増えていくだろう。人間のエゴによりペットの命が左右されている状況を容認するのではなく、飼い主がいない世界でも愛するペットが生を全うできるような命のセーフティネットが機能している社会を志向するべきであろう。

 

[1]一般社団法人ペットフード協会『平成27年 全国犬猫飼育実態調査』 2015年(最終閲覧日:2016年7月29日)http://www.petfood.or.jp/data/chart2015/index.html

[2]厚生労働省『健康日本21(第二次)各目標項目の進捗状況について』 2013年(最終閲覧日:2016年7月29日)http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/sinntyoku.pdf

[3]一般社団法人ペットフード協会, 同上

[4]ペトハピ編集部『高齢化が進む犬たちの「老犬ホーム」の利用状況とは?』 ペトハピ, 2016年(最終閲覧日:2016年7月29日)https://pet-happy.jp/article/000502.html

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