18歳選挙は行われたけど「若者と政治」って今後どうなるの?

原田謙介(YouthCreate代表)×安部敏樹(リディラバ代表)特別対談
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2016.08.24
  vol.2

2016年7月31日(日)

 

この夏の参院選での大きな変化として、選挙権年齢が18歳以下へと引き下げられました。NPO法人YouthCreate代表の原田謙介さんとリディラバ代表の安部敏樹との対談後編です。

(前半はこちらから)

 

安部: 18歳選挙解禁しましたと言う中で、今後社会が良い方向悪い方向どんなシナリオがあり得ると思いますか?

 

原田:最悪のシナリオで言うと、政治的中立の話が強化されて、公務員、特に学校の先生が政治的活動を行った場合の罰金を強化するみたいな、要は教育に関わる人が政治に関わることをより制限してくる可能性がありますね。

確かに昔の日教組みたいになってはよくないんですが、先生だって1人の人間だから、俺はもっと先生は自分の意見を言って良いと思うんです。一方、生徒に意見を押し付けちゃいけないし、生徒も先生の意見に安易に流されないよねっていう状況にも持ってかないといけないと思ってます。これと真反対に規制が強化されていくっていうのが最悪のシナリオの一つですかね。

あともう一個、最悪のシナリオでマニアックな話を言うと、主権者教育じゃなくて有権者教育に留まりそうなところ。主権者教育っていうのは17歳の人でも、16歳の人でも主役で、選挙に行ける行けないにかかわらず、社会の主役として社会が認めますよっていうことですが、今はどっちかで言うと、有権者教育にしかなってないところが多いと思います。選挙ってこういう仕組みですよとか、模擬選挙はこうだよとか。それで良いんだ、十分なんだと思われちゃうと悔しいですね。

 

安部:でも有権者教育と主権者教育の違いはかなり誤解されて広まっている可能性があるから、ちゃんと分けて伝えることをしないと厳しそうですね。

 

原田:世の中、メディアもそうなんですけど、主権者教育のニュースやるときに女子高生がセーラー服来て投票箱に投票している写真しか出さないんですよ。わかりやすいからって。そこでとどまっちゃうとまずいですよね。年に一回投票に関する授業だけやれば十分みたいな。

そうじゃなくて、投票の話なんて主権者教育の一部なんだよっていうことの理解をもっと広げたいんです。

もう一つ主権者教育に関して付け加えると、いつまでたっても主権者教育は社会の先生か公民の先生がやることだよねっていう認識でとどまっちゃうことも危惧しています。

 

安部:なるほど。シチズンシップ教育である以上、社会の科目に留まらずあらゆる科目でやるべきですよね。最悪なシナリオと言いつつ結構有り得そうな話だなぁ。

 

原田:副読本もロングホームルームとかで、クラスの担任の先生が自分の受け持つ生徒にやってくれることを理想として作っているので、主権者教育が社会の先生だけに押し付けられ重荷になっちゃうのはまずいと思います。

逆に良いシナリオで言うと、YouthCreateも一回しか成功してないんですが、政治家がもっと学校に来るようになるとかは実現したいですね。主権者教育の授業が普段互いに接することが少ない政治家と高校生とかとを交流させる場になっていくと理想的かなと思います。相当難しいとは思いますが。ちょっとずつ、とんがった自治体で事例は出ています。

もう一ついうと、主権者教育の良い影響が親に広がることも実現したいです。参観日とか公開授業みたいなときに、学校も敢えて主権者教育のプログラムを設定して、しかもグループワークとかに親とか地域の人とかも混ぜてやるっていうのが実現されたら良いなと思っています。

 

安部:それはアクティブラーニングの観点から見ても非常に有意義な授業ですね。

 

原田:主権者教育において面白く無いのは、参加者が高校3年生しかいないってことですね。

 

安部:そんな均質な社会ねーだろみたいな(笑)

 

原田:東大生だけで議論しても面白くないのと一緒で、均質な人だけで議論しても面白くないんですよ(笑)。だからそういう場に、地域の人とか親とか別の性格の登場人物が入ると面白くなるんじゃないかなと思っています。

 

(原田謙介さん(右)と安部敏樹(左)。写真:豊田健、以下同)

 

選挙権引き下げの次は被選挙権の引き下げ?

安部:少し視野を広げて、18歳選挙が実現した次にあり得るのは、被選挙権の引き下げなんじゃないかと思ってるんですけどこの点はどうですか?

 

原田:被選挙権も下げたほうが良いと思いますね。なぜかって言うと、大学生とか高校生くらいの間に立候補できるなら、立候補するやつ圧倒的に増えると思うんです。実際大学生の時は将来政治家になるぞって意気込んでたやつで、大企業入って、企業の仕事も面白いしお金稼げるし、そのうち結婚とかしてリスクも取れなくなるし、立候補しませんっていうストーリーめっちゃあるじゃないですか。

 

安部:確かに我々の周りにも、政治家なるぞって意気込んでたのに今何もしてないやつめちゃくちゃいる(笑)

 

原田:二十歳でできるんだったら一回やってみますよね。一回やってみて4年でやめてもいいわけだし、そういう意味で、やっぱり若い力を求めているのであれば、社会経験や政治経験をぶっ飛ばすベンチャー的な若い力を欲しいわけでしょ。

 

安部:俺も社会経験なさすぎて、リディラバ起ち上げ当初は見積書すらかけなかったもん(笑)

 

原田:実績なんて後からついてくるし、社会にでる前の学生の年代が立候補できるようになれば面白いと思いますね。

 

安部:確かに。仮に若い人がどんどん立候補するようになったとして、例えばデンマークとかだと、えらくセクシーな路線で注目集めてる20歳くらいの議員さんがいるじゃないですか。ああいうのが出てくるのはいいことだと思います?

 

(デンマークの現役女子大生政治家 “ニキータ・クラストルゥプ” さん(21))

参照元:参照元:Instagram @nikitaklaestrup

Nikita Klæstrupさん(@nikitaklaestrup)が投稿した写真 - 2015 2月 15 1:41午前 PST

原田:基本的には有りだと思いますよ。選ばれてるわけだし。タレント候補って言われる人がいるけど私は全然OKなタイプで、元SPEEDの今井絵理子さんだって受かったし全然OKなんですよ。何かの世界で成功してるとか、セクシーな体をいい感じに見せることで人の注目や関心を集められるっていうのは能力じゃないですか。その能力がある人が立候補して選ばれれば、本人にやる気があってその能力を何かで政治に活かしてくれるはずですし。そういう人がどんどん政治に来てくれるのは良いことだと思います。

 

安部:なるほど。少し話はずれるんですけど、もし学生が立候補するならいきなり国政よりは地方議会とかのほうがあり得ると思うんですけど、地方議会って色々問題がありますよね。議員の年齢構成が高齢者側に偏っているとか、リスク高い割に月給安すぎて職業にならないとか。

こういったものってもし被選挙権の引き下げが議論になる時はどんなふうに議論されるんですかね。

 

原田:政務活動費が月数千円なんてとこもありますもんね。東京までの往復すらできないなんてひどいケースも有るし。

どっちに振れるかですかね。兼業前提で議会も夜とか休日にしかやらなくて給料を上げないまま色んな人を巻き込むっていう感じ。そっちに振れた時に、議員が政治の勉強ができなくなると意味がなくて、それを担うのは議会事務局ですよね。日本の地方議会の議会事務局って文字通り今は議会の事務作業しかやってないわけですが、当然理想論で言えば霞ヶ関的な、もしくは衆議院参議院の法制局みたいな立ち位置をとってもらいたいわけで、そういった議員のサポートをするところに人を割けるのであれば、兼業の人が増えても機能するとは思いますね。

 

安部:なるほどね。確かに政治家が色んな社会課題の現場を学んだり視察したりするコストを下げられるところはうちの会社としても力になれる気がします。やっぱり学ぶためのコストっていうのを考えて投票している人なんて本当に少ないと思う。

 

原田:視察だけでも大変ですけど、それ以上に視察して得たものをきちんと法律として組み立てていくってなるとそれは相当大変な業務だと思います。まあそれをやらないから地方議会の議員立法がないわけで。

 

安部:兼業を前提にしない場合は、学べるコストをできるだけ少なくしつつ議員の数も減らして給料上げて議員として利権誘導とかにも頼らず独立してやっていけるようにしてあげるべきってことですかね。

議員の数を減らしている自治体もいくつかありますよね。特に合併の時とかに。

 

原田:議員の数は確かにどんどん減ってますね。結局議員の問題は何と言っても給料ですよね。あと議員をやめたり落選したりした後に何も保証がないっていう環境かな。

 

安部:確かに議員でなくなったら何でも無くなるっていう環境は酷っちゃ酷ですよね。

ただ給料上げるってなるとそれはそれで反発をくらうだろうし。

 

原田:だからこそ、18とか20とかで立候補できるようになれば、見識は少ないままかもしれないけど、そのあたりのリスクは取りやすいですよね。それで、学生からそのまま30年40年と見識少ないまま議員やり続けるのは良くないでしょうけど、例えば4年やってみて一度外にでて10年くらいしてまた地元の政治に帰ってくるとかができるかもしれないですね。

 

安部:競争が激しくなれば、見識が広がらないまま議員続けられるってことも無くなりそうですしね。今は競争がないからあまり勉強をしない人でも県議会議員とかになれちゃう。立候補者を増やせる仕組みから競争がある環境を作る必要がありますよね。

 

安部敏樹(あべ・としき)

一般社団法人リディラバ代表理事/株式会社Ridilover代表取締役

1987年京都府生まれ。東京大学教養学部卒。同修士修了。東京大学在学中の2009年にリディラバを設立。600名以上の運営会員と150種類以上のスタディツアーの実績があり、4000人以上を社会問題の現場に送り込む。総務省起業家甲子園日本一、学生起業家選手権優勝、ビジコン奈良ベンチャー部門トップ賞、KDDI∞ラボ第5期最優秀賞など受賞多数。

 

市民や企業にできることは?

安部:現時点では企業とかってこの選挙周りの変化や政治で扱うような社会課題には関心がないことが多いんだけれど、それらのテーマが事業に役立つとなると興味を持ってくれる機会になると思います。直接関係する可能性、例えば、専門家として主権者教育の現場にファシリテーターを導入するとか、18歳選挙解禁によって政治動向が変わって事業とかCSVとかに関わるとか、色んな可能性もあるけど、企業に属する人にとって今回の選挙権引き下げはどういった変化として捉えるべきなんでしょうね?

 

原田:まずは、主権者教育っていうのはアクティブラーニングのはしりだから、文科省とかが出したプログラムの中でアクティブラーニングが盛り込まれた正式なものってあの副読本が初めてらしいんですよ。だからアクティブラーニングみたいに、先生もそのプロじゃないから外部の人材を求めるっていう分野については事業機会になり得ると思います。

 

安部:たしかに今も自分が東大で担当していた講義とか、その講義録として出版した本に絡めて教育委員会とかからの問い合わせがすごい多いわ。

 

 

(安部敏樹著「いつかリーダーになる君たちへ」)

 

原田:ファシリテーターやるときに地域の課題とか地域のネタとかを盛り込む機会が増えたんじゃないかなと思います。主権者教育での模擬選挙とかそういう時に。で、そういうことをするにはやっぱり地域に根ざしたファシリテーターが必要だから、そういったファシリテーターの育成っていうのも事業機会になると思います。

あとは半分ネタみたいな話ですけど、新入社員を採用するときに投票行ったかって聞いてみるのはどうですかね。新聞読んでますかみたいに。我が社の20代社員の投票率は80%以上目指しますみたいなキャンペーンとか。

利益誘導とかとは別で、そういうのをアピールするのは企業のイメージアップになると思うんですよね。

 

安部:社会人の教育って一部は企業が担えるところだし、そういった社会への参画を奨励しているっていうのはいいかも。

 

原田:その点に絡めてYouthCreateの売り込みをすると、企業の新人研修で今YouthCreateが高校生とかにやっている教育事業をやっても同じくらい効果はあるでしょうし、他にも例えば全国に支社がある企業で、地域に特化しているブランディング戦略を打ち出すなら、その地域の政治と絡めた研修とかもできると思います。

 

安部:確かにそれはさっき話してたみたいな学校の現場が変わっていることを社会や企業の側が正しく認識するべきって言う話とも繋がりますね。YouthCreateが企業の主権者教育をやるっていうのは良いかも。

 

原田:どこかの会社がうちの会社の20代社員は80%以上投票してますっていうブランディング戦略をやると面白くなると思います。

良くも悪くもネット選挙解禁の時はそれを機会にネット関連のビジネスをやっている人がたくさん参入してきました。もちろん裏で思ってることは単に株価上げたいとかもあったのかもしれないけど、おかげで面白くなったこともたくさんあります。企業が政治にもっと参入したら面白いんじゃないかと思ってます。

 

安部:いずれこういった政治教育とかがマーケットになるには先行して入ってくれるプレイヤーが必要になりますしね。是非企業の参画は期待したい。

 

原田謙介(はらだ・けんすけ)

NPO法人YouthCreate代表理事/岡山大学講師/グリーンバード中野チーム代表

1986年岡山県生まれ、東京大学法学部卒。大学卒業後NPO法人YouthCreateを設立。文科省・総務省が昨秋全高校生に配布した「私たちが拓く日本の未来-有権者として求められる力を身に付けるために-」の執筆者。

 

現代はもはやシルバーデモクラシーじゃない

原田:あと、今政治そのものも変わっていることは大いにあって、今回の参院選の公約見てても、奨学金出しますとか子育て支援やりますとか若者向けの政策がかなり出てきているんですよ。悩ましいところなんですが、財源がないのにただ大きい政府にするっていうのって変な話だと思いませんか?個人的にそれは嫌で、どの政党も維新とかを除いて、ただ大きな政府になりますって言ってるようなもんじゃないですか。それに対して批判がない世の中ってどうなんだろうと思っています。

奨学金増やしますっていうのは、それそのものは良いし、私達の世代も大学生の世代も奨学金増えて嬉しいって言うけど、何かへの支出を減らさないまま奨学金増やすってなったら、30年後今の我々はその時の20代から老害って言われちゃいますよ。

 

安部:少し18歳選挙の話から広がるけど、多分自民党が大きな政府に偏り過ぎちゃったのが良くなかった。なんか日本の国民はみんな大きな政府側の議論ばかりすることに慣れちゃったんですよね。小さな政府を志向する議論が全然出てこないから各党の政策を見ていても対立軸がいまいち明確じゃない気がします。

 

原田:あたかも、どの若い人も大きい政府を好んでいるでしょうっていう空気感がありますよね。

 

安部:だからどの政党も小さな政府側の政策を主張できないっていう状況ですよね。

 

原田:そこをさ、例えば自分でベンチャー経営とかビジネスやってる人って、国も頑張るだろうけど自分は自分でやるぜっていう思想を持っていておかしくないはずなんですけど、なぜか奨学金の話になると増やすべきっていう話になってるのが変な感じがしますよね。

 

安部:別の考え方を問題提起する人がほとんどいないよね。是非は別としてリバタリアン的な考え方が政治の議論の真ん中には出てこないですね。

 

原田:今はもはやシルバーデモクラシーじゃないんですよ。今生きてる人世代デモクラシー。誰もがいい状態じゃないですか。低所得者には1億円配られるし、高齢者も年金減らないし。未来の世代に借金を回しているだけでしょ。

 

安部:そこに対する自覚がほとんどないですよね。年金だって一回景気連動するように決まったのに守られてないですもんね。

 

原田:下がるはずの時は下がらず上がる時だけ上がったじゃないですか。

 

安部:結局自分たちにとって都合のいいものを世代全体で甘んじてしまっている感じがありますよね。政治に若者を巻き込んでいく過程で、結果として全世代が未来の世代に甘える社会になっちゃ本末転倒。そういった観点の議論もより喚起されればと思います。

 

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