かわいい子ほど解き放て!

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2017.04.20

みなさんは子どものころ、どんな遊びをしていましたか?

鬼ごっこ、だるまさんがころんだ、砂遊び、ケードロ、縄跳び、おままごと…玩具やゲーム機がなくても、子どもが集まれば自然と遊びが始まっていました。ちなみに、私は子どものころ「地球の裏側が見たい」と言いながら友人と、家の庭に穴を掘っていくことにハマっていました。

さて、2月のとある週末、私は自然豊かな長野県信濃町(しなのまち)で、子どもの遊び心を育む一風変わったツアーに参加してきました。1泊2日のこのツアーでは都会の小学生8人が、信濃町の一般家庭に宿泊し、おうちの方と一緒に料理を作ったり、地元の酒蔵を訪問するなど、様々な体験をしました。

このツアーを企画したのは、一般社団法人エデュケーション・コミュニティ代表の森田次郎さん。仕事の傍ら、東京都三鷹で週に1度、幼稚園の放課後に小学生を集めて「ふれあい教室」を開いています。

今回、どうしてこのツアーを企画されたのでしょうか。

 

「楽しい」は自分たちで作るもの

子どもたちを見ていると忙しいし、制限が多く、あまり遊べてませんよね。せっかく公園に集まっても、DSしてたり、カードゲームしてますよ。特に男の子が。そして、一番気になるのが遊びづくりしてないなぁと。たとえば、野球するにも、あそこの木がファーストで、ベンチがサードで、ブランコの端っこがホームというように決めたり。ドロケー(警察役と泥棒役に分かれる鬼ごっこ)をするときも、逃げていいのは○○地区までと決めたり、小学校1年生から6年生まで巻き込んでもっと主体的に遊んでいました。今の子どもたちは、大人が用意した環境には上手く適応できるけど、いざ、解き放たれると何をしたらいいかわからなくなったり、親がいないと何もできないことも多いです。自ら0から1を作るとか、答えのないことをさせてみるという経験をしてもらいたいですね。」

森田さんが運営するふれあい教室では、カレーづくりを薪割りから始めたり、農業やブラインドサッカー、刺繍、芸大の先生と巻物をつくったり、バリトン歌手と本場のクリスマスソングを歌うなど、体験を徹底的に重視したプログラムを組んでいます。

 

「そのまんまの体験」をさせたい

森田さんが長野県信濃町を子どもツアーの訪問先に決めたのは、リディラバの信濃町ツアーがきっかけ。信濃町で採れた野菜を使ったマルシェを企画するツアーや、職場から離れて心地の良い自然に囲まれながら仕事をするリモートワークのツアー、雪の下からキャベツを収穫するツアー。これら3回のツアーに参加するうちに、信濃町の魅力に惚れ込みました。夏は澄み切った湖・冬は雪という自然の豊かさだけでなく、ツアーを通して知り合った信濃町に住む人々の東京の人には無い透明感。自分が運営する教室の子どもにも、信濃町の自然や人に会わせたい、都会ではできないことを体験させたいという想いから、今回の子どもツアーを企画しました。

長野県信濃町で参加者が収穫した野菜でマルシェを企画するツアーの時の写真(右の一番手前が森田さん)

この記事では、早速、長野県信濃町での体験づくしの1泊2日の子どもツアーをレポートします!

 

長野の大自然に飛び込む

2月のとある日。子どもたちを乗せた列車が、長野県信濃町の黒姫駅に到着しました。窓の外には、まぶしい雪と、険しい山々に真っ青な澄んだ空。まさに別世界が広がっていました。

子どもたちは、見慣れない雪にワクワク。早く「雪で遊びたい!」

地元の方に用意していただいたスキーウエアに着替えて、早速、雪の中へ走ってゆきます

まずは、雪の中を走る競争。シンプルに広場の端から端までの速さを競うだけ。シンプルだからこそ、大人も子ども盛り上がります。

子どもたちは雪の上を軽やかにかけていく一方、参戦した大人は柔らかな雪の上で、早く走ろうとするほど力が入り、足を雪にとられ脱落していきます。

全力で先頭を走っていた女の子も、雪に足をとられ、途中で脱落。

放心して雪の冷たさに身を埋めていました。

 

続いては、雪合戦。これもルールはなく、何をすれば勝ちというものはなく、ただ目の前の相手に向かって全力で投げていくゲーム。無心になれるほどの楽しさがあります。

簡単な遊びには年齢は関係ありません。小学校一年生の女の子も、ぎゅっぎゅっと雪玉を固めて、全力で振りかぶって投げていきます。

投げられたら、投げ返す。どんな至近距離でも子ども同士に容赦はありません。

そして、だんだん工夫を覚えてくると、次はいくつか玉を作り貯めておいて、連投する方法が流行!

冷たさや痛さに、涙しながらも黙々と次の雪玉を作っています(笑)

そして、いつしか事態は子どもVS大人の図に。

地元の若者も引率者もみな、雪玉をもった子どもに追いかけ回されています。

最後は、プラスチックのそりに30個近くの雪玉を詰めておいて、大人が来た時に一斉に投げるという方法を編み出した子ども達。この勝負、完全に子どもの勝利でした。

 

晩ごはんを一緒につくろう

さて、今回の合宿で子どもたちが泊まるのは「信濃町農山村生活体験受入の会」に加盟されている一般家庭。自分の孫ほどの子どもが泊まりに来るのをみなさん温かく迎えてくださいました。

私は参加者唯一の男の子であるヒロくんと一緒に、写真店を営む中村さんのお宅にお邪魔することに。カメラが並ぶ店の奥に住居スペースで、主の中村さんがヒロくんと一緒に夕食を作ろうと準備をしてくださっていました。

 

長野県信濃町はそばの名産地。今日の夕食は手打ち蕎麦です!

中村さんはそばを打ち始めてもう15年。近くの公民館で習い始め、今では本格的な道具を家にそろえるようになりました。今回は、翡翠(ひすい)そばと言われる少し緑がかったそば粉を使ったそばの打ち方を教わります。

まずは、そば粉に水を加え、両手の指先で合わせます。水が全体にまわったら、かたまりを一つにまとめてよく捏ねていきます。

全体重をかけて果敢にこねようと挑戦しますが、そう甘くありません…。小学生の体重では軽すぎて、うまく力が入らないため、中々均等にこねるのが難しいです。手をこまねいていると乾いてきてさらに固くなっていく悪循環になってしまいます。想像以上に固いかたまりに苦戦するヒロくんに変わって中村さんが手早くこねると、あっという間に生地の表面にツヤが出てきました。

次に、よくこねた生地を交互に向きを入れ替えながら伸ばし四角く広げると、手早く切ります。

中村さんは切る工程は難しいので、子どもに任せるつもりはありませんでした。しかし、好奇心旺盛なヒロくんの「やりたい」というきらきらした瞳に負けて、任せてみることに!

中村さんが包丁のもち方をヒロくんに伝授します。小学生の手に比べると、はるかに大きな包丁で1.5㎜の厚さに切ってゆきます。手元が見えにくく均等に切るのは大人でも難しい作業ですが、ヒロくんは途中で投げ出さず、果敢にチャレンジしていました。

そうして、この日の夕食は中村さんが切った細いそばと、ちょっと歯ごたえのあるヒロくんのそばが混じる合作となりました。

 

小学生、酒蔵へ行く

合宿2日目には、長野県信濃町の地酒メーカー高橋助作酒造さんを訪問!お酒の原料や作り方の説明を座学で受けた後、工場内を見学させていただきました!

早速案内していただいたのは麹蔵。ここは蒸した「麹米」に「麹菌」を混ぜ、布に包んで1日〜2日程度寝かせるための場所。炊き上がりのお米の甘さを濃縮したような強い香りが立ち込めています。麹は、仕込みにおいてお米が持つ「でんぷん質」を「糖」に変換する重要な役割を担っています。不必要な雑多な菌が麹に付着すると最終的な味が下がるため、繊細な味を出すために蔵人さんは納豆は食べないそう。

子どもたちは、お父さんお母さんが大好きな「お酒」がどう作られているのか、興味津々で話を聞いていました。

「みんな左右の違いは分かる?」

普通の酵母の場合には、糖化と発酵が進むにつれて泡の状態がいろいろに変化していきます。右はアルコール度数12パーセントの高泡(たかあわ)と呼ばれる状態。左の方は、さらに発酵がすすんでアルコール度数13パーセント、酵母が落ち着いた状態で落泡(おちあわ)と呼ぶそう。引率の大人もたった1パーセントの違いに驚いていました。

近づいて、匂いを嗅いでみると「なんか、お父さんの匂いがする…」彼女の家では、よくお父さんがお酒を飲んでいるのでしょうか(笑)

 

さて、酒蔵訪問の楽しみはやっぱり試飲。

みんなでカンパーイ!

今回子どもたちが試飲するのは酒は酒でも甘酒。(※アルコールはありません)

 

お酒と名のつくものに…恐る恐るひと口。

「ぷはー!」初めての甘酒に、感動。

酒蔵の甘酒はお米の甘みが際立つ、とっても優しい味。あまりのおいしさに、みんな二杯目を飲んでいました。

 

そして、家族へのお土産の日本酒には、子どもたちのオリジナルのラベルを貼り付けます。

「お母さんいつもありがとう。」「おとうさんお酒飲みすぎないで。」という優等生的なものから「お酒のみすぎタイキック」まで個性豊かなラベルが完成しました!

 

そうして、充実の子どもツアーもそろそろ終わり。長野を出発し、東京に戻ります。

1日目に泊まった佐藤さんのおじいちゃんも、子どもたちとの別れにさみしさがこみ上げ、号泣。

それにつられて、子どもも号泣。わずか一日でしたが、子どもたちは地元の人たちと家族のような関係を作り出していたようです。

最後は、駅まで見送りに来てくれた地元の方々に、みんな電車の窓に張り付くようにして手を振りました。

今回、子ども達は、地元の農家さんとそばを作ったり、ピザを焼いたり、ひな祭りを楽しんだり、地元の子どもと大人と一緒に雪まみれになりながら遊んだり、コンニャクからけんちん汁を作ったり、酒造を見学したりと、とにかく体験ずくしの一泊二日となりました。信濃町の人のあたたかさと、冷たい雪の楽しさを思い出に、家族の待つ東京へ戻っていきました。

 

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―森田さん、ツアーを実施してみていかがでしたか?

 ホテルとかじゃなくて、こうして農家さんの家に泊まっちゃったってことが最高です。その日はじめて会ったおじちゃんとか、同じくらいの孫とか、お父ちゃんやお母ちゃんと必然的に話をしますよ。いきなりスズメバチの子や脚付きのイナゴの佃煮が出てきて、それを食べてみたり、食べられなかったり。これ、そんな簡単に経験出来ないですよね。トラウマになったりして(笑)

 信濃町の皆さんには感謝しかありません。見ず知らずの子どもらにそこまでやってくださる。本当にかけがえのない、かけがえのないものをいただきました。今回、参加した子どもたちが、「また信濃町に帰りたい!」と言ったんです。「帰りたい!」と…勝手ですよね(笑)でも、これは純粋な子どもの反応だと思うんです。

 僕は、結局人が何を感じるか、感じさせるかだと思っています。でも、これは言葉で伝えるのではなく、自ら赴き、体感してもらうしかないんです。そういう経験が必要なんだなと、きっとわかってくれるはずです。もちろん、こうしたツアーはリスクだらけです。何でやるのかよく聞かれますよ。それでも、おせっかいに一緒に行きませんか?と誘い続けます。お世話になった信濃町のみなさんの顔忘れられませんからね。「一度じゃないよな?」って顔してましたから(笑)

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取材を終えて…

自分で作る「楽しい」思い出

今回ツアーでは、子ども達が地元の人との関わりの中で自らルールを作りながら、楽しく遊んでいました。与えられたルールの中でどう立ち回るか、どう工夫していくかという1から10をつくる経験も大切です。しかし、課題先進国と言われる日本で、これから答えのない未来に生きる子どもたちにとって、0から1をつくる力は重要になってくるのではないでしょうか。

 

次は地元の子どもたちに何が残せるか

森田さんにとって今回のツアーはまだ通過点。5月には参加者がとうもろこしを植えるツアーを企画中だそう。そして、それだけで終わらずに、夏にはその植えたとうもろこしの収穫に行くといいます。今後、さらに長野と東京の家族が行き来しあえるような関係が出来ればいいなと思っているそう。信濃町を起点とした交流の輪の広がりが、ますます楽しみになってきました!

 

(後日、子どもたちが作ったオリジナルラベルのお酒が親御さんたちに渡されました!)

 

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菊川愛理


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